スズメバチの巣を駆除して思うこと
害虫駆除専科の田中です。この仕事を始めて10年になりますが、今でもスズメバチの巣を前にすると、緊張で背筋が伸びます。今日は、先日行った駆除作業を通じて感じたことを書かせていただきます。
現場は下田市の築30年の民家。お客様は80代の女性で、「軒下に何か丸いものができている」とのご連絡でした。現地に到着すると、確かに2階の軒下に直径約30cmのスズメバチの巣がありました。キイロスズメバチの巣で、働きバチが活発に出入りしている状態でした。
防護服を着込む際、いつも思うのは「この仕事の責任の重さ」です。全身を覆う防護服は、真夏だと中の温度が50度近くになることもあります。ヘルメットに装着された防護ネットで視界も限られ、厚い手袋で細かい作業は困難です。それでも、この装備なしには作業はできません。
はしごを設置し、慎重に巣に近づきます。スズメバチたちは、巣に近づく私を警戒し、羽音を立てて威嚇してきます。その音を聞くたびに、「彼らも必死で巣を守ろうとしているんだ」と感じます。
駆除用の薬剤を噴射した瞬間、数十匹のスズメバチが一斉に飛び出してきました。防護服にぶつかってくる衝撃は、小石を投げつけられているようです。この瞬間が最も危険で、わずかな隙間でも刺される可能性があります。
10分ほどで巣の撤去が完了し、地上に降りた時、お客様が玄関から恐る恐る顔を出されました。「もう大丈夫ですか?」という問いかけに、「はい、安全です」と答えると、ほっとした表情を浮かべられました。
その後、お茶をいただきながら話を伺うと、「孫が遊びに来るのに、あの巣があったら危なくて庭に出せなかった。本当に助かりました」とおっしゃいました。さらに、「実は主人が亡くなってから、こういうことを頼める人がいなくて困っていた」と。
この言葉を聞いて、改めてこの仕事の意味を考えさせられました。私たちが駆除しているのは単なる「害虫」ではなく、人々の「不安」なのだと。スズメバチも自然界では重要な役割を果たしている生き物です。しかし、人の生活圏に巣を作ってしまった時、その共存は難しい。
駆除した巣を持ち帰る車の中で、いつも少し複雑な気持ちになります。でも、お客様の安心した笑顔を思い出すと、これも大切な仕事なのだと実感します。自然と人間の共存は簡単ではありませんが、その橋渡しをする仕事に誇りを持って、これからも地域の安全を守っていきたいと思います。
害虫駆除専科では、駆除だけでなく、再発防止のアドバイスにも力を入れています。スズメバチが巣を作りにくい環境づくりなど、予防の知識も広めていくことが、本当の意味での「解決」につながると信じています。